もっとフツーの暮らしがしたかった。
もっとフツーが良かった。
多くの人が気がつかないまま通り過ぎるように
もっとフツーの、どこにでもある
よくあるような景色の中で
いたかった。
特別なものなど、何もいらなかった。
ただ、ただ、フツーが良かった。
誰もが同じ人生を歩むわけじゃないけれど
ありきたりで良かった。
千の褒め言葉よりも、万の感嘆よりも
ただ一つの、あたたかい手が欲しかった。
迷い悩むときに、
その手が背を軽く叩いてくれたなら
それだけで良かったのに。
もっとフツーで良かった。
ただ一つの手は、手に入らない。
それは私のものではないから。